よく噛むことが大切な理由

現代の食べ物は、やわらかく食べやすいものが多く、昔と比べて「噛む回数」が減ったといわれています。特に高齢者の場合、加齢に伴う噛む力の衰えもあり、どうしても咀嚼不足になりがちです。
しかし、噛む回数がどのように健康に影響するのか、わからない方も多いかもしれません。
今回は、食べ物を噛む回数の目安や、よく噛むことが大切な理由、よく噛むための食事のポイントを紹介します。

1.食べ物を噛む回数について

厚生労働省では、より健康な生活を目指す観点から、食べ物を噛む回数の目標を「一口あたり30回以上」としています。
なお、よく噛んで食べても、左右どちらかに偏った噛み方をしていると、顔の歪みや頭痛、肩こりなどの体の不調につながる可能性があります。そのため「口の右側で10回・左側で10回・両方で10回」噛むことを意識すると、さらによいでしょう。

2.よく噛むことが大切な理由

噛むという行為は、単に食べ物を細かくするだけでなく、消化酵素の分泌を促進し、食べ物の消化吸収を助ける働きがあります。
唾液が細菌などを洗い流すことで口の中が清潔に保たれ、虫歯や歯周病を予防できるでしょう。口の中の健康状態が良いと、多くの歯を失い十分な食事が摂れないことによる「低栄養」のリスクも減らせます。

さらに、咀嚼は脳の血流を増加させる効果もあります。噛む動作によって脳が刺激され、活性化するのです。特に、記憶や学習に関わる海馬という部位の血流が増加することが分かっています。
これは、認知機能の維持や向上にもつながると考えられています。高齢者の場合、咀嚼機能の低下が認知症のリスクを高めるとの研究結果もあり、咀嚼の重要性が再認識されています。

3.よく噛むためのポイント

一口30回以上噛むのは、必ずしも簡単ではありません。したがって、よく噛んで食べやすくなるように、食事内容・調理方法・食べ方を工夫することが大切です。

・噛む回数が自然と増えるよう、噛み応えのあるメニューを意識しましょう。

(根菜やキノコ類など食物繊維を多く含む食材、タコやこんにゃくなど弾力性のある食材、雑穀ごはんなど食感を楽しめる食材を活用するのがおすすめです。)

・調理方法の工夫としては、ぶつ切りや乱切りのように、食材は大きめ・厚めに切るのがポイントです。そのうえで、炒める時間やゆでる時間を短めにすると、歯応えを残せます。
・味付けは薄めにして、食べ物の本来の味を感じられるようにしましょう。

食べ方の工夫

・口の中に食べ物がある間は、飲み物などの水分を流し込まない。食べ物を口に入れたらいったん箸を置き、飲み込んでから次の食べ物・飲み物に移りましょう。・噛むことに集中しやすい環境作りのために、スマートフォンやテレビを見ながらの「ながら食い」をしない。
・噛む回数を意識してゆっくりと食事を楽しみましょう

一口30回以上を目標によく噛んで食べると、肥満予防をはじめ、全身の健康にさまざまなメリットがあります。

毎日の食事内容や調理方法などを工夫し、噛む回数を増やしましょう。
また、ながら食いをしてしまうという方は、家族や友人と一緒に食事を摂るのがおすすめです。食事の時間を可能な範囲で確保し、よく噛みながら食事を楽しみましょう。